定期的に栃木の実家まで両親の様子を見に行っている。行くとだいたい母がとんかつやらからあげやらの揚げ物を持たせてくれる。
一回では食べきれない分量をくれるので、食べきれない分は冷凍する。
その冷凍しておいたからあげを食べようとして「そうだカレーにしよう」と思った。
インド風イギリス料理「チキンティッカマサラ」
イギリスに「チキンティッカマサラ」という料理がある。
チキンティッカはヨーグルトと香辛料に漬け込んだ鶏肉をタンドール窯で焼いたもので、日本のインド料理店ではタンドールチキンとして出されることもある。
チキンティッカマサラは、そのチキンティッカを具にしたカレーのことだ。
リジー・コリンガム著『インドカレー伝』(河出書房新社刊)では、チキンティッカマサラがこき下ろされている。少し長いが引用する。
なにしろ、この無粋な料理は、探究心旺盛なインド人シェフのひらめきによって生み出されたものではない。ある無知な客が、注文したチキンティッカ[骨なしタンドリーチキン、これはインド料理]がぱさついていると文句を言い、つき返してきたものだったからだ。シェフはキャンベルのトマトスープ缶とクリームとスパイス少々を混ぜて、けちをつけられたチキンにソースとしてかけた。こうして、国籍不明の料理ができあがった。いまではイギリス人は、こともあろうにこの料理を、一週間に少なくとも一八トンは食べているのである。
この後にはまずいという表現もあって、とにかく著者はこのチキンティッカマサラが気に入らないようだ。
要するにこの料理は、日本の中華丼や天津丼、麻婆茄子とかの類、つまり本場ものとはかけはなれたまがい物で、私が言う中華風日本料理と同じような、インド風イギリス料理だということだろう。なるほどそういうことなら著者の気持ちはよくわかる。
からあげでカレー作った
でまあ、その日本で中華料理と呼ばれているまがい物と同レベルの存在であるチキンティッカマサラにヒントを得て、からあげを具にしたカレー。「チキンカラアゲマサラ」を作ってみようと思った。といっても、基本的にはインドカレーの作り方だ。
まず、冷凍しておいたからあげをさっと揚げる。
たまねぎのみじん切りを炒める。
たまねぎが半透明になり、嵩が半分ぐらいになったら、一度火を止め、トマトとスパイスを加える。
今回使ったスパイスは、ターメリック、クミン、コリアンダー、カイエンペッパーという基本に、クローブとシナモンを追加。
トマトは間違って買ったホールのやつなので、潰しながら混ぜて弱火で炒め、少し水分を飛ばす。
水を少々加え、塩で味付けする。塩はほんの少しでいい。日本のカレーのようにしょっぱくなったら台無しである。
からあげを加えてソースとからめながら少し煮たらできあがり。
炊いておいたタイ米にかけて食べた。
まずいと評されるチキンティッカマサラというのは食べたことがないが、これはなかなかにうまかった。そもそもチキンがカレーに合わないはずがない。
うちの母はからあげの下味ににんにくを使うので、それがカレーとよく合う。
自分が最近よく見るインド在住のYouTuberの動画では、実際インドにもチキンフライのカレーがあるようなので、まあでっちあげのまがい物とはいえどもインド料理から大きくはずれてはいないだろう。